事例紹介

生物医学工学アプリケーション

適用業務:薬理学

ユーザー ブリストルマイヤーズ・スクイブ/薬理学部門
会社概要 ブリストルマイヤーズは、新薬の開発と電気生理学を専門とする 主要な製薬会社です。
所在地 米国ニュージャージ州プリンストン


課題

米国では、およそ50万人の人々が、毎年心臓発作を患います。さらに50万人の人々が、虚血性心疾患を患います。冠状動脈がふさがれる病気は、心臓への正常な血液、従って、酸素の供給が妨げられます。ブリストルマイヤーズ・スクイブ 製薬研究所のジェフリー・バーン博士は、このような問題によって如何に、個々の心筋または心筋の細胞が影響を受けるかを研究しています。特に、彼は、健康な心臓と不健康な心臓からの細胞の活動電位または電流を研究しています。彼のグループは、心臓が安定した脈拍を保つのを助けるための薬を研究・開発をしています。

活動電位について

健康な心筋細胞は、規則的な化学変化をして、活動電位を発生させます。細胞膜全体の荷電粒子の動きに起因する電圧スパイクは、1つの鼓動に対する1つの細胞の活動表現となります。細胞の活動電位が、より強くてより規則性があると、1つの領域の全ての細胞に関してより良好な脈拍を維持していることになります。しかし、この脈拍は、一部の細胞が酸素欠乏になると、乱れてきます。バーン博士は、健康な心臓と不健康な心臓からの心筋活動電位を測り、酸素欠乏が如何に心拍に影響を及ぼすか、及び心臓の酸素欠乏に対して、如何に異なる種類の薬が、安定した脈拍を維持するのに役立つかを探求しています。彼のチームは、細胞の心拍を中断させずに何百もの活動電位の測定をする必要があり、また電圧変化の視覚的な表現を得る必要があります。

 

問題の解決

バーン博士の研究チームは、心臓の活動電位を測るためにDSP社のDADiSPを採用しました。研究者は、処理を開始するに当たり、まず、小さな実験動物の心臓から組織をとります。組織は、ティッシュ・バスに置かれます。次に、組織の細胞に微小電極を突き刺します。微小電極は、表示のためにアンプとオシロスコープに信号を送ります。データは、1000−3000Hzでサンプリングされて、研究室のパソコンに蓄積されます。そして、DADiSPで波形表示や分析を行ないます。

オートメーション化された分析

バッチファイルを使いDADiSPをスターさせ、データファイルのインポート、ワークシートとウインドウのセットアップ、そしてデータの分析を自動化するコマンドファイルが指定されます。分析判断の必要箇所がコマンドファイルに組み込まれていて、オペレーターがデータ分析のあらゆる段階で対応できるようになっています。ダイアログボックスは、オペレーターに、インポートすべきファイルの選択、カーソルのセットや調節を促します。また、難しい測定の前に他の操作が必要かを促します。プログラムは、最初に、微小電極によって記録されたデータポイントを表している波形をインポートします。次に、波形の微分値を得て、それを使って、一度に1つの活動電位を抽出します。プログラムは、波形の心臓拡張期の電位、つまり心拍間に現れる電気的活性を測定するために微分値から情報を得ます。この測定値が、後の分析における他の測定値をチェックする時の基準として使われます。抽出の後、プログラムは、活動電位のアップストロークの最大速度と振幅を測ります。これらの測定は、記録された心拍がどれくらい強いかを示し、それは細胞膜の中の化学的バランス、したがって、どれくらいの酸素が利用できるかを指示します。

細胞回復時間

反虚血性薬は、利用できる酸素の量を増加させるか、最適な酸素量よりも少ない場合でも強い心拍を発生させるように細胞を手助けします。活動電位の幅が、最後に測定されます。大部分の電気生理学的な研究では、この測定は、電圧がピークからベースラインまでの中間に戻った時と90%戻した時になされます。これらの測定は、一つの細胞が心拍を回復するに必要な時間を計算するのに使われます。もし、一つの細胞が十分な酸素を得ていないなら、速く回復して、正常な心拍が再び行なわれる前に長い時間休止する傾向があります。それは、それのまわりの細胞に関しては、リズムを乱すことになります。反不整脈薬は、回復時間を延ばし、それによって、1つの領域の全ての細胞が、同程度の率の脈拍を打つことができるようにします。

 
ベースバンド フィルター

信号視覚化のためのDADiSP

活動電位によって全ての測定が行なわれ後で、プログラムは、計算値を印刷します。その後で、プログラムは、プログラムの停止か、別の分析の開始を準備します。バーン博士によると、もし彼がDADiSPを使っていなければ、彼は活動電位をスプレッドシート上で扱うか、またはオシロスコープに表示される波形の写真を撮って、それを手作業で測定するかしなければならなかっただろうと言っています。『DADiSPは、信号を視覚化し、かつ素早く、正確な測定をするのを可能にしました』。さらに、『短時間で何百もの同一の測定をする必要が有ったので、DADiSPを動作させるのにコマンドファイルを使うことができたことは、特に役に立つアプローチでした』と言っています。これらのことから、彼は、DADiSPを大変気に入っています。 健康な心臓と不健康な心臓の活動電位の評価、及び新しく発見された薬、あるいは既知の薬がそれらにいかなる影響を及ぼすかは、酸素欠乏の心臓の患者の生活の質を改善し得る情報を提供します。