事例紹介

データ分析アプリケーション

適用業務:高層ビルの地震に対する影響度調査のための加速度計データの解析

ユーザー パシフィック・ガス・エレクトリック
会社概要 Pacific Gas & Electric社のYi-Ben Tsaiは1989年10月17に起きたロマプリエタ地震の被害にあった34階建ての加速度記録図を再構築しました。
所在地 サンフランシスコ、カナダ


課題

地震によるその破壊的な力は歴史を通して人間を悩ませてきました。地震の規模に依存して、構造物に被害をもたらしその結果として人々の生活を脅かします、その範囲は広域に渡り、火災の発生や、停電といった被害も起こります。このような被害を最小限に抑えるため、研究者は地震による建物への影響を研究してきました。

地震による揺れの記録

地震による揺れの記録

先述のような被害を食い止めるため、加速度計を用いて地震が起きている間の建物の強い揺れを記録します。記録結果は加速時間シリーズもしくは加速度記録図のようなアナログ/デジタルデータとして保存されます。信号処理と解析によって多くのアナログ加速度記録図が後にデジタル化されます。解析はこのような加速度記録図や基準線補正・速度や変位を得るための積分、高速フーリエ変換(FFT)や応答データ計算によって多様に行われます。加速度記録図1ペアを評価するためには更に詳細な解析をしなければなりません。このような詳細な信号処理には、地震による地面運動の空間整合性を研究するために行われる断面の機能計算等を含みます。更に地震の揺れに対する地面と建物の応答を測定するために、地面とFFTスペクトル比関数の計算をします。

 

データの再現

PG&E社の地質調査部のYi-Ben Tsaiは1989年10月17日にサンフランシスコで発生したロマプリエタ地震によって34階建てのスチール製建物の最上階における水平面の加速度記録計データがどのようになったかを再現するよう指示されました。ロマプリエタ地震は巨大地震の一つで、マグニチュードは7.1でした。更に、問題の高層建築物というのはPacific Gas and Electric社が一つの事務所を構えていた建物である。

 
問題の解決

問題の解決

1989年の時点では34階建てのPG&E社の建物は加速度計を取り付けていなかったため、Tsaiは最近の加速度記録図とPG&E社に近接した建物からの加速度記録図を用いてDADiSPによってロマプリエタ地震の加速度記録図の再現しようと試みました。

 
地震伝達関数

地震伝達関数

ウインドウ1・3には小規模な地震による34階の加速度記録図の記録結果と近接した建物の地階の加速度記録図の記録結果が示されています。グラフからウインドウ1の加速度ピーク(PA)は0.008g、ウインドウ3のPAは0.025gとわかります。gは重力加速度を表しています。ウインドウ2・4はこれらの加速度にFFTをかけたものとなっており、ウインドウ5はこれら2つのFFTの比を表しています。この比は高層建築物の地震伝達関数を表しています。ウインドウ5内のFFT比の振幅はウインドウ6に示されています。また、高層建築物最初の3つの振動モードは0.27Hz、0.78Hz、1.39Hzとなっています。

 

加速度記録図の再現

ロマプリエタ地震による近接した2階建ての建物の地階からの3番目の加速度記録図がウインドウ7に表示されています。また、PAは0.13gです。この加速度記録図のFFTはウインドウ8に表示されます。ウインドウ5の地震伝達関数とウインドウ8のFFTを掛け算することでウインドウ9を作成します。この積の逆FFTがウインドウ10に示されています。W10の実部はロマプリエタ地震における高層建築物の34階での加速度記録図として得られ、ウインドウ11に表示されます。尚、PAは0.20gとなっています。

 
ピーク速度計算

ピーク速度計算

ロマプリエタ地震における34階建ての建物とそこに近接した建物の地階部分のピーク速度(PVs)やピーク変位(PDs)を求めるためにウインドウ7やウインドウ11において更に計算が必要になります。W7とW11の加速度記録図の最初の29秒を切り取ったものをウインドウ15とウインドウ12に表示します。W15とW12のデータはPVsを計算するためにウインドウ16とウインドウ13を積分します。

変位の違い

ロマプリエタ地震による高層建築物の34階のPVは21.5cm/sだったのに対して、近接した建物の地階部分のPVは21.3cm/sでした。ウインドウ16とウインドウ13の2回目の積分を行なうことで、これら2つの地震中のPDsを得ます。グラフはW17とW14に表示します。近接した建物の地階部分のPDが5.7cmだったのに対して高層建築物の34階部分ではPDが6.2cmでした。最後にその差を随時とったものをウインドウ18に表示します。W18内の波形からPDは6.8cmであることが示されます。

 

便利なツール

高層建築物の加速度記録図を再現するのにDADiSPを適用することで、Yi-Ben Tsaiは34階建ての建物内部の計算が可能になりました。Tsaiは「地震の揺れが起こっている間の地面や建物の応答を研究するために地震による強い揺れの加速度記録図を解析するためにはDADiSP非常に便利であることがわかりました」と語っています。