事例紹介

防衛分野のアプリケーション

適用業務:潜水艦の音響信号解析

ユーザー ロッキード・マーチン社/海洋レーダー・センサーシステム部門
会社概要 ロッキード社のレーダー・センサーシステム部門は、潜水艦のための音響処理システムの設計、製造とテストを担当しています。
所在地 米国ニューヨーク州シラキュース


課題

潜水艦は、窓を持っていないので、ソナー(水中音波探知機)が水中の物の位置を検知するのに用いられます。ソナーは、超音波を発して、反射されてきた波形を記録します。ソナーは、周辺地域の他の潜水艦を検知するのにも用いられるので、動作中は、雑音を最小にするように設計されます。敵対的な状況下で、静寂にすることは、他の潜水艦に気付かれずに航行することを可能にします。したがって、音響信号の解析と処理は、対立状況下で死活問題になります。この様な状況下では、潜水艦の音響モニタリングシステムが、敵によって見つけられる前に、敵の潜水艦を見つけることができるならばそれは有利になります。

ビームフォーマー(Beamformer)のテスト

ロッキード社/海洋レーダー・センサーシステム部門は、ニューヨーク州のシラキュースに拠点があり、潜水艦の戦闘システムのための音響処理システムを設計・製造しています。同部門は、潜水艦の船体に取り付けられたセンサーから音響データを受信し、そのデータを使って、例えば、他の潜水艦のような目標を見つけて、追跡する機器を設計しています。 この機器は、センサーからの音響信号を入力する受信機とビームフォーマー フィルターから構成されます。ビームフォーマーは、信号強度、信号方向に関する情報を提供する空間フィルターの働きをします。そのためにビームフォーマーはアレーが指定された方向を向くようになっています。それによってビームフォーマーは、ある指定された方向から以外の受信信号を抑圧します。音響統合・テスト グループは、ロッキード社で設計・製造された受信機とビームフォーマー ユニットを完成させ、テストすることを担当しています。

ビームフォーマーのテスト
 

問題の解決

音響統合・テスト グループは、潜水艦での音響アレーをシミュレーションする特別テスト機器(Special Test Equipment、STE)と呼ばれている機器を設計しました。STEは、ワークステーションから外部コマンドを受け入れて、Unit Under Test(UUT)を動作させ、ワークステーションへデータを入出力します。

信号処理とグラフィック分析

DADiSPは、ロッキード社の設計技術者であるモタニ氏がUUTの統合とテストにおいて使用するツールの1つです。DADiSPはワークステーション上で稼動し、STEを運転する音響入力データを生成するのに用いられています。一度、UUTがデータを処理すると、出力データは、更なる分析のためにワークステーションに集められます。DADiSPは、データの抽出、ソート、さらにFFT、相関およびフィルターを含む信号処理に用いられています。それらの結果は、DADiSPで視覚的に表示されます。

信号処理シミュレーション

モタニ氏は、DADiSPをビームフォーマーで発生する信号処理をシミュレーションするために使っています。それは、ビームフォーマーの出力特性をシミュレートし、実際のビームフォーマーの特性と比較されます。それにより、ビームフォーマーの性能の評価、必要な設計変更が可能となります。ビームフォーマーで行われている処理の多くは秘密ですが、次のノイズフィルタのシミュレーションは、DADiSPの使用例を示します。

 
 
ベースバンド フィルター

ベースバンド フィルター

ウインドウ1は、トーン信号に正規分布のノイズが加算されたノイズを含む信号を示します。ビームフォーマーの信号処理パスの一つは、ノイズを除去することです。このためには、信号はベースバンド処理をされます。それは、その中心の周波数がゼロにセットされることを意味します。ノイズは、Window 9で示すように、20ポイントのカイゼルウインドウによるローパスフィルタによって除去されます。その後で、フィルターをかけられた信号は元の高い周波数へシフトされます。ベースバンド処理された信号、フィルターをかけられた信号、それと元の高い周波数へシフトされた信号は、それぞれWindows 2、3と4で示されます。ウインドウ5は、最初のノイズが加算されたノイズを含む信号、そしてWindow 8は、フィルターをかけたきれいな信号のスペクトルを示します。これらの2つの信号を比較することによって、多くのノイズが明らかにフィルターをかけることによって除去されたが簡単に分かります。

 

音響データの合成

DADiSPは、数のシリーズ(数列)を簡単に発生し、操作することができるので、音響入力データを生成するために用いられています。例えば、帯期制限されたノイズを生成しサンプル入力データとして用いられました。ランダムノイズは、全ての周波数に対して均一の振幅のスペクトラムを持ちます。帯期制限されたノイズは、希望する周波数帯だけで周波数成分を持っているランダムノイズです。ノイズは、ランダムに段階的な正弦波を加えることによって発生されました。ワークシートは、5000点のノイズ シリーズの例を示します。ここで、サンプリング周波数は、10000Hzです。帯期制限は、FFT bin 50〜bin 90に対応する1953Hz〜3476Hzの周波数です。

音響データの合成
 

シミュレーションと信号処理のためのDADiSP

このように、DADiSPは音響入力データのシミュレーションを可能にするだけでなくて、ビームフォーマーで発生する信号処理のシミュレーションも可能にします。信号処理のシミュレーションは、ロッキード社が信号対雑音比を予測することを可能としました。テストの実施後、実際の信号対雑音比が計算され、理論上の値と比較されます。モタニ氏によると、『DADiSPの長所は、大きくは二つあります。第一は、その機能にあります。その機能は、DADiSPを役に立つツールにしています。第二は、使いやすさです。その使いやすさは、DADiSPを実用的なツールにしています。DADiSPは、これら有用性と使いやすさを大きな利点としています。我々は、多くの信号処理とシミュレーションのためにDADiSPを使っています』。 このようにDADiSPは、潜水艦の戦闘システムのための音響処理システムの開発と製造を、そして海軍軍人のより安全で有効な環境提供に貢献しています。