事例紹介

電力システムアプリケーション

適用業務:商用電源の高調波ひずみ品質とフィルターコンデンサの破壊原因の調査

ユーザー クイーンズランド電気委員会
会社概要 クイーンズランド電気委員会は、オーストラリアの電力システムに対する問題の調査及び発見をしています。
所在地 ブリズベーン、クィーンランド州、オーストラリア

課題

クイーンズランドの探炭鉄道の新しい電力システムでは、電力の供給量をコントロールするフィルターコンデンサに致命的な故障が発生しました。その原因は鉄道に供給している50kVの調和フィルターと電力システムの間で300Hzという大きな共振が起こったことと判明しました。この事故は重大な損失だけでなく電力技術者を悩ませる問題となりました。

 
高調波ひずみ

高調波ひずみ

世界中の電力会社が電圧波形の高調波ひずみに関連した問題を経験しています。非線形要素は、電力供給においてコンデンサの故障と通信回路との干渉の原因となる非線形正弦波電流を引き起こす原因となります。

 
信号解析ツールの必要性

信号解析ツールの必要性

供給の品質を十分に補償するため、電力会社は、高調波ひずみをオーストリアの基準2279やアメリカの基準IEEE519以下に保つようにしました。基準レベルを上回っている場合、事故が発生しなくても問題を起こすであろう高調波成分を現地調査によって特定します。これらの調査は電力技術と信号解析の両方のスキルと両方を行うことが出来るツールが必要です。

問題の解決

クイーンズランド電気委員会(QEC)の調査チームは故障の原因を特定するため、DSP Development Corporation社の画像表示・データ分類ソフトウェアであるDADiSPを用いました。DADiSPと高い問題解決能力によって、エンジニアはシステムで問題となる高調波を特定し、その原因を究明しました。

高調波電力の流れ

電力システムにおいて、同期発電機は基本周波数50Hzから60Hzで発電します。非線形な負荷はこのエネルギーを有効な出力にするとともに、電力システムへの逆流を防ぐための高調波エネルギーに変換します。高調波電力は非線形な負荷の電力システムに戻っていくので、高調波電力の流れの向きを決定することで高調波成分の位置を特定することが可能になります。この処理にDADiSPを用いました。

FFT解析

パソコンのデータ獲得システムで約30個の電流と電圧の信号を測定しました。データ獲得は、フィルタバンクの6番目の共振を認識する極めて高い周波数ので行っていました。1チャンネルにつき2560Hzのサンプリングレートで、記録間隔は2秒でした。記録したデータはHPフォーマットからバイナリーファイルに変換し、後処理をするためにDADiSPにインポートしました。電圧と電流の高調波成分を高速フーリエ変換(FFTs)を用いて切り取りました。周波数関連の位相をFFT後の位相出力にするDADiSPのマクロを作成し、それを信号の連続的なサンプリングによって引き起こされるねじれ誤差を補償するために用いました。

 
変圧器飽和

変圧器飽和

電力システムの周波数が0.2Hzほど変化してもデータは固定したサンプリングレートよって獲得できてしまいますので、スペクトル漏れが精度に大きく影響します。調査チームは漏れを十分小さくするためにDADiSPのハニング窓をもちいました。その後、DADiSPのG(Generate)関数を用いてテスト信号を発生し、スペクトル漏れに対する検証を行いました。電圧と電流の2つのシリーズを用い、sined power flowと周波数出力の比を計算するマクロを作りました。問題を分離することができれば、非対称な負荷電流の飽和を調査中の変換器から見つけることができます。この電流には偶数・奇数両方の高調波が入っています。6番目の高調波成分は共振を大きくしていることが判明し、フィルターバンク付近において大きい電力変換器に電圧を加えると特に悪い共振が起こることもわかりました。これらの共振はコンデンサに高電圧を起こすことが起こった事故の原因に繋がった。

自動電力解析を行うためのDADiSP

調査チームの一人T.A Georgeは、DADiSPがプロジェクトに貢献したことを特に称えています。調査について書いたレポートの中で彼は、「DADiSPの機能であるマクロやあらかじめ設定されたスプレッドシートを用いることで信号処理の大半を自動化できたので労力を減らすことができました。」と話しています。「また今後もこのような問題が起起きた場合の解析でもDADiSPを標準的なツールとして積極的に使っていき、できるだけ事故を防ぎたい」と述べました。