事例紹介

信号処理アプリケーション

適用業務:地球外生命体探査のための信号解析

ユーザー シリコンエンジン・NASAエームズ研究センター(SETIプロジェクト)
会社概要 シリコンエンジンは、NASAの調査する地球外生に命体が存在するかどうかの証拠を得るために行っているSETIプロジェクトの一部である。
所在地 パロアルト、カリフォルニア


課題

宇宙旅行が現実的になってきたことから、宇宙に知的生命が存在するかどうかを注目するようになりました。天文学や物理学の研究から、太陽系は星の形成から自然に生まれたと提言しています。このことから、他の太陽系に生命が存在し、進化するには70以上の異なる分子が必要であることがわかりました。

 
ET探し

ET探し

コロンブスの新世界発見500周年を記念して、アメリカ航空宇宙局(NASA)は地球外文明の兆候を見つけるためのシステムを開発しました。このプロジェクトでは、天の川にある4000億の星の中で軌道にある他の太陽系に生命が存在しているかどうかの判断を行います。

 
問題の解決

問題の解決

近年の遠隔探査技術の発展によって他の太陽系でも広範囲にわたる調査が可能になりました。今回の方法では、他の太陽系に生命が存在する惑星があれば、その信号スペクトルのマイクロ波領域を探す高度な信号解析をする必要があります。マイクロ波領域はバックグラウンドノイズの最も小さい周波数帯である1000MHzから10000MHzにしました。この領域内のノイズが小さいことから、他の生命体も星間のコミュニケーションはこの領域を使って行われると仮定しました。この高分解能マイクロ波による地球外文明探査計画(High Resolution Microwave Survey : HRMS)は、NASAの宇宙科学・宇宙開発機関である太陽系探査部門によって実施されています。調査は、モフェットフィールドにあるNASAのエイムス研究所(ARC)によって管理され、ARC、パサデナとカルフォルニアにあるジェット推進研究所、研究に協力している各大学とNASAのディープスペースネットワーク(Deep Space Network) によって行われます。

信号の検出

調査には2種類の補完的な探索モードがあります。1つのモードは、1000MHzから10000MHzまでの全ての範囲の周波数を天球から観測するための調査をします。2つ目のモードは高感度で、ターゲットを1000MHzから3000MHz以上に絞り、太陽の近傍(地球から100光年以内の)の星から発する弱い信号を観測します。これらの調査を支えているのは、完全なデジタル方式でリアルタイム処理ができるマルチチャンネルスペクトルアナライザー(MCSA)です。MCSAは分光計でもありこの場合はフィルタバンクとして用いています。MCSAはバンド幅10MHzで、電波望遠鏡からの同調信号と直交信号(複雑な信号)を受け取り、約1Hzの分解能で1400万個の周波数チャンネルに分解します。また、信号を同時に5つの粗い分解能に分解します。6個の分解能を用い、異なる時間間隔のサイン波を検出し、1Hzを超える分解能は連続的な波の高感度な検出に用います。

 

FIR多層フィルタ

宇宙からの信号を探索するためにMCSAの出力を設計された信号検出回路に送ります。MCSAは35枚のプリント回路基盤を持ち、毎秒500億回の処理を行います。それは、離散フーリエ変換プロセッサを備えた2つのカスケードフィルタバンクから構成されています。最初のフィルタは関係のある入力信号の周波数帯全体で均一に広がる144個のフィルタ(チャンネル)から構成されています。このフィルタバンクの144チャンネルの出力は2番目のフィルタに送られます。次に離散時間フーリエ変換(DFT)が行われます。今回、線形位相の必要性があったことと効率的に実行させるために、多層フィルタバンクのアルゴリズムを用いたが、有限インパルス応答(FIR)ローパスフィルタを使用するべきです。

FIRローパスフィルタの設計

FIRフィルタの仕様はパスバンドリップルを0.1dB以下、ストップバンド減衰を少なくとも70dBにしなければなりません。フィルタのバンド幅は正規化周波数の1/144で範囲は0.0から0.5です。FIRフィルタとして、約2000個のタップ数を持つリップルタイプのフィルタが望ましい。

 
フィルタタップ数の無制限化

フィルタタップ数の無制限化

マウンテンビューのSETI研究所のDr. C. K. Chenは、FIRフィルタタップの発生はMSCAの全体的なパフォーマンスにとって重要であると言いました。現在の市場に出ているフィルタ設計のパッケージの多くではFIR用フィルタ数は最大500個までしか設計できません。しかし、DSP Development CorpのDADiSPでは、設計タップ数の制限はないのでFIRのフィルタ設計に用いました。

迅速なフィルタ設計を行うためのソウトウェアはDADiSPである

Dr. Chenは「DADiSPは長いFIR係数をいとも簡単に計算し、本当に速いフィルタ設計をしてくれた。」という報告をしました。MCSAは現在、1728個のタップ数を持つローパフィルタを用いています。将来は156個のチャンネルを持つ2つのカスケードフィルタを持つMCSAにアップグレードする予定です。従って、最初と2番目のフィルタバンクに対するFIRフィルタの長さはそれぞれ2184個と1716個のタップ数になります。DADiSPではこれらの改良を簡単に行うことができます。このプロジェクトのために開発された機材は、6ヶ月に渡りオーストラリアのパークスとモプラでの電波望遠鏡で使われました。このように、DADiSPは地球外生命体の信号を探索に役立ちました。少しずつですが、DADiSPは我々の宇宙対する認識と役割を大きく変えるものになるかもしれません。